IoTを事業化するためのチームが始動
IT業界でここ数年のトレンドとなっているキーワードの一つがIoTだ。富士通フロンテックでは当初からIoTに着目し、新ビジネスとして事業化を加速するためにチームを立ち上げた。その初期メンバーとしてミッションを託されたのが焦櫂忠文だ。「今まで手がけたことのない領域への挑戦は正直不安でした。当社がこれまで取り組んできた製品をインターネットと組み合わせることで、新しいソリューションをつくり、着実に事業化しようという方針でスタートしました」。その最初のコアとなったのがRFID技術だった。RFIDとは電波を用いて、小型のICタグに埋め込まれた情報を非接触で読み書きする技術のこと。バーコードのように直接一つずつスキャンする必要がなく、たとえばダンボールに入った数十個の製品のデータを、箱から出さずに一括で読み込める。社内ではすでに大手アパレル会社の商品管理システムなどの実績があった。これを一歩進めて、RFIDで集めた情報をクラウドにアップし、インターネットを介した高度なデータ活用のソリューションを提供する取り組みがスタートした。
RFIDを活用したIoTを提案
「私の当時の担当ユーザーは金融業界などが主でしたが、IoTチームではこれまでと異なる業種も開拓することになるので、とても興味をひかれました」。そう語るのは企画開発を主導する役割を期待されて異動してきた姜炳琥だ。担当することになったのが自動車部品メーカーの倉庫管理システム。これまで人手によって管理し在庫の確認も目視で行っていた。そこにRFIDを導入して、読み込んだデータをクラウド上のWEB画面で一括管理できるシステムの提案を行った。お客様の業務を最大限に効率化するシステムで、圧倒的な効果が期待できる。提案を進めるうちに、お客様の方から様々な機能を追加したいという要望が出始めた。新しい技術への取り組みで、しかも時間や人員の制約もある。その中でどうすればお客様の要件を満たすことができるか迷うことも多く、そのたびに焦櫂と方向性を確認し合いながら業務を進めてきた。「チームで最初のシステムをリリースできた瞬間は、ホッとしたと同時に、事業化への確かな自信が生まれました」と姜は言う。
トレーラーIoTが物流業界を革新する
一方、焦櫂は新たなソリューションへの挑戦を始めた。輸送用トレーラーにGPS端末を搭載して、車両の現在位置やメンテナンス情報をクラウド上で管理できるようにする、これまでにないシステムだった。物流会社ではトレーラーの管理に苦慮していたが、IoTによるトレーラーの管理が普及すれば、共同配送の実現など物流業界に大きな革新をもたらすことができる。焦櫂たちはお客様と一緒にアイデアを出しながら、システムの設計・開発を進めていった。「お客様から“こんなことはできないか”と頼られると、なんとか期待に応えようと模索します」。システムの要となるGPS端末そのものの開発も行い、さらにトレーラーの管理者やドライバーが全国どこでも情報を確認できるように、スマホアプリも開発していった。現場でのテストを重ねてようやくシステムが完成。お客様からは「5年前からの構想が実現した」と感謝の言葉があった。現在はこれをお客様とともに業界内に普及させていくために、新たなユーザーとなる輸送業者への導入を進めている。お客様と一体となって業界を変えていく挑戦はまだまだ続いていく。
新人たちがハードルを乗り越え急成長
事業を進める上で大きな戦力になってきたのが2人の若手エンジニアだ。永田弘隆はRFIDを担当し、最初はシステムの実証実験からスタート。配属当初は自分のチェック不足でミスをすることもあったが、目の前のお客様のために何とかしたいという気持ちが仕事へのモチベーションになってきたという。「最近はお客様への提案も任されるようになりました。提案活動の中で複数のお客様の間で実現したい機能が共通することも多いことがわかり、それを軸とした新しい技術の確立にも挑戦しています」。もう一人の須貝楓夏はトレーラーIoTの担当となり、スマホアプリの設計・開発を任された。身近にスマホアプリ開発の経験者がいなかったので、協力会社の有識者を頼ったり、自ら技術をマスターしながらプログラムづくりを進めていった。「自由に仕事が進められる半面、最初の頃はわからないことが多く、社内外の関係者に助けられてばかり。それが悔しくて日々技術を学ぶようになりました」。現在では技術だけではなく物流業界への知識も深まり、お客様からの信頼も厚い。「流行りの技術を取り入れながら、物流業界のために貢献したいと思っています」と須貝は話す。
新たな顧客価値の提供にも挑戦
チーム立ち上げ後、何もないところから実績をつくるという当初の目標を達成し、事業の幹をつくることができた。その幹をさらに太くするために、今後の新製品のIoT化や、クラウドに吸い上げたデータをAIで分析・活用するなど、新たな顧客価値を提供するソリューションにも挑戦していく。「黙っていても仕事が入ってくる部署ではありません。技術的な夢を追いかけるだけではなく、着実に売れる製品をつくり、自分たちで仕事を創っていくという意識を、メンバー全員で共有しています」と姜は言う。挑戦には失敗もつきものだが、どうすれば次は上手くいくかを一緒に考えて、若手にチャンスを与える雰囲気があることで、前向きに仕事に取り組んでいけるとメンバーたちは口を揃える。「若手たちも技術面だけではなく、顧客対応などの面でも飛躍的に成長してくれています。近い将来、部下をもって活躍してくれる立場になって、事業とともに彼らがさらに成長していくことを期待しています」と話した焦櫂には、すでに若手が躍動する会社の未来が見えているようであった。
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